それでもなお、「次世代地熱開発」という看板を掲げ、数年ごとに“再発見”され、再び開発熱が再燃する。この繰り返しは、いったいなぜ起こるのだろうか?
いくらでも作れる表向きの理由
表向きの理由として掲げられるのは、エネルギー危機や脱炭素社会への要請である。たとえば、福島第一原発事故後の電力供給不安、ロシアによるウクライナ侵攻による天然ガス価格の高騰などが挙げられる。
再生可能エネルギーへの期待が高まる中で、地熱発電は「天候に左右されない安定電源」として再評価されている。しかも日本は、世界第3位の地熱資源を保有する“眠れる地熱資源大国”とも言われている。開発が進まないのは「技術が追いついていないからだ」とされ、その論理のもとで、政策的なテコ入れや研究費の増額が繰り返されてきた。
しかし、実用化には至っていない。その主な原因は次の3点に集約される。
コストが高すぎる 現在の地熱発電所でも、1井戸あたり数十億〜100億円のコストがかかるとされる。次世代型の超臨界地熱ではさらに深く掘削しなければならず、コストは一層膨らむ。 不確実性が高い 実際に井戸を掘ってみなければ、どの程度の熱が得られるか、どのくらいの期間持続するかはわからない。このため、多少の赤字でも耐えられる強固な資金体力が必要となる。これもまたコスト増の要因だ。 特殊な設備が必要 火山地帯では、空気中に硫黄分が多く含まれるため、熱交換器やパイプ、井戸内ケーシングなどに長期的な耐久性を確保する必要がある。腐食しにくい特殊な材料を使用し、装置の密閉性を高める「遮硫化(しゃりゅうか)」対策が求められる。これも大きなコスト要因である。
これら3つの問題は、40年経っても解決されておらず、むしろ解決の糸口すら見えていないのが現状である。
今回の「次世代型地熱推進官民協議会」が、いくらの費用をかけ、どの程度まで実証・検証を行う予定なのかは不明だが、コストが見合わずに失敗に終わることは、始める前からある程度予見できる話だ。協議会に出席している関係者たちも、過去の失敗と同じ理由で今回もまた失敗するであろうことを、百も承知しているに違いない。