そこで、CさんはAさんのところへ、DさんはBさんのところへ訪れ、それぞれ粒子を持ち寄ります。
この時、研究者たちが考えたのは、双方の粒子を少しだけ触れ合わせるような特別な操作(これを「結合ユニタリー操作」と呼びます)を行うことです。
結合ユニタリー操作とは、二つの粒子の状態を絡み合わせたり交換したりするために量子力学で使われる基本的な操作のひとつです。
この操作を実行すると、もともと完全な量子もつれ状態にあったA–B間の粒子から一部のもつれが取り出され、新たにもつれた粒子ペアがC–D間に生まれます。
この時点で重要なのは、CさんとDさんはお互いの粒子を直接操作したわけではなく、あくまでAさんとBさんがそれぞれ手元にあった粒子をCさんとDさんの粒子と結びつける操作をしただけ、という点です。
その結果、間接的にCさんとDさんの粒子が新しくもつれ合った状態になるのです。
ただし、この操作をしたことで、最初のA–B間のもつれが完全になくなってしまうわけではありません。
実際には、A–B間にもつれが少し残ることもあり、その「残り」が次のペアに渡すための貴重な資源になります。
これを研究者たちは「もつれのリレー」と表現しています。
では、こうした「もつれのリレー」は一度しか行えないのでしょうか?
研究チームは、このプロセスが繰り返し行える可能性を探りました。
つまり、C–Dペアに操作を行った後も、まだA–B間にもつれが残っているなら、さらに次の新しいペア(E–Fとしましょう)にも同じ操作を繰り返して、もつれを渡していけるかを検討したのです。
その結果、最初に用意したもつれの量が完全になくならない限り、理論的には次々と複数のペアにもつれを渡し続けることが可能であることが示されました。
ここでひとつ重要な疑問が湧いてきます。
理論上は無限に次のペアへと渡し続けられるとしても、それは実際に意味があることでしょうか?