ところが、こうして生じた新しいもつれは、別のペアには利用できない性質を持っています。
言い換えると、こうした余計なもつれは「無駄」として蓄積され、貴重な資源が減ってしまうことにつながります。
これが繰り返されると、いつか必ずもつれが底をついてしまい、リレーが続けられなくなってしまう可能性があるのです。
果たして、もつれを渡し続けることには限界があるのでしょうか?
それとも、渡す量を小さくすればどこまでも多くのペアにもつれを渡し続けることができるのでしょうか?
研究者たちは、この問いを解明すべく具体的な理論モデルを構築して検証しました。
その結果、一見矛盾するようですが、理論上はもつれを分ける量を極めて微量に設定することで、多数のペアにもつれを分け与えることができる可能性が示されました。
ただし実際には、もつれを分け与えるペア数を増やすほど、一つ一つのペアに行き渡るもつれの量が非常に小さくなってしまうため、実用面での限界が出てきます。
それでは、このような理論上の可能性は具体的にどのような仕組みで実現されるのでしょうか?
「量子もつれ」を複数ペアに渡す新技術――理論モデルで検証

研究者たちは、この「量子もつれを次々と渡していく」という新しいアイデアが本当に可能なのかを検証するために、シンプルで直感的な理論モデルを考案しました。
具体的には、まずAさんとBさんという二人の人物がそれぞれ離れた場所にいる状況を設定し、二つの粒子が完全な「量子もつれ」の状態で結ばれているものと想定しました。
この最初の二つの粒子のペアを、もつれの出発点(「源」)と位置づけています。
ここで、別のペアであるCさんとDさんが登場します。
CさんとDさん自身は、もつれた粒子を持っていませんが、もつれを何とかして手に入れる必要があるという状況です。