目次
- 創業者の着想:一枚のレシートに眠るデータの価値
- 自社アプリを中心とする消費者・ブランドネットワークの構築
- 真の狙い「Ibotta Performance Network(IPN)」の誕生
- Walmartが支える成長と「紙→デジタル」シフトの追い風
創業者の着想:一枚のレシートに眠るデータの価値
Ibottaの創業者兼CEOであるブライアン・リーチ氏の経歴は、典型的なITベンチャー創業者とは一線を画す。彼はハーバード大学、オックスフォード大学、イェール大学ロースクールを卒業後、合衆国最高裁判所のデイヴィッド・スーター判事のロークラークを務め、最終的には国内有数の訴訟法律事務所でパートナーにまで上り詰めたエリート弁護士だ。

(画像=乗客がレシートの写真を撮る姿から事業の着想を得た)
そんな彼が起業するに至ったのは、ブラジルのリオデジャネイロからの帰国便で目にした何気ない光景にある。隣の乗客が経費精算のためにスマートフォンのカメラでレシートを撮影していたのだ。
そんなふとした行動をきっかけに、一枚のレシートが、購入された商品のUPC(商品コード)、価格、数量、店舗、日時に至るまで、購買行動のすべてを記録した「情報の宝庫」であるのではないかと思い至った。一方で、調べてみると、そのレシートの中に含まれる魅力的な情報を整理して、消費者の支出習慣の正確な全体像を把握する方法はまだないということも判明した。
テクノロジーでこのデータを束ねることができれば、消費者一人ひとりの特徴を無視した画一的なマスマーケティングから脱却し、各人に最適化されたプロモーションを提供できるのではないか。その着想が、Ibotta(”I bought a…”=「私は〜を買った」に由来)の原点になった。
もちろん単なるビジネス上の野心だけではなく、「人々の日常生活の支えになる何かを創造したい」という強い使命感もあったという。Ibottaが提供するキャッシュバックが食費や家賃、医療費の助けになるという点もサービスを思案するなかで重要なポイントだった。