また海外の発注者であれば、その国の取引実務に沿った発注をしてくる可能性がある。国内の業者は、日本では当然に支払われるべき費用も支払われない、あるいは争われるリスクを負うことになるかもしれない。

資材高騰や契約変更などの事後的な事情が発生した場合、その旨の詰めた契約上の合意があったか、何が契約違反になるのかについてのコンセンサスはあったのか、契約に適合した工事についての共通了解はあったか、そういったところのボタンのかけ違いが未払い問題の背景事情となっているのかもしれない。

そのような中で、元請が資金ショートに陥れば、必然、下請には金銭は行き渡らないし、一次下請が資金ショートに陥れば二次下請には金銭は行き渡らない。

日本のゼネコンの多くは協会発注の建設工事は手がけたが、海外パビリオンの工事はあまり手がけていない、と聞く。日本のゼネコンが海外パビリオン建設に見出したリスクがあるのであれば、それは何か。また、海外パビリオン建設を手掛けたゼネコンは、何を注意したか。そういったところに今回の問題を解く多くのヒントがあるだろう。

また、開催前に懸念されたこととして、海外パビリオンの建設の多くは計画通りいかず、果たして間に合うのか、ということがしばしば指摘された。間に合ったとしても窮屈な工程を余儀なくされたことは想像に難くない。

無理な契約、見切り発車のような契約はなかったか。そのような中、予想外の資材高騰も相俟って、必要な資金が循環してないという事情に至ったのではないだろうか。

主催者である万博協会はこういった契約問題をどこまで把握していたか、あるいは把握できたか。契約トラブルは工事の遅延を招く、受発注者、元下間の問題だから関知しないというのであれば、「イベントの確実な成功」を目指す主体としての姿勢が疑われてしまう。地方自治体も同様だ。

資金繰り窮した業者はどうすればよいか。契約上の問題として誰に何を請求できるか。万博協会、地方自治体、国に対して救済を求める(あるいはその責任を追及する)ことも予想されるが、その法的根拠は何か。救済が一度認められると、「それが認められるなら、これも」と、これまで表面化してこなかったケースが続々出てくるかもしれない。然るべき指導は関係各者に対してするが、直接金銭的な救済はしない、という行政らしい結果も十分予想される。