他の報道では、中国館、アメリカ館でも同様の問題が発生しているという(「万博の工事費は誰のフトコロに入っているのか アメリカ館でも未払いが発覚 下請け業者の怒りの矛先は」)。

海外パビリオンの建設は各国の責任で行われる。「2025年日本国際博覧会 パビリオン出展」募集要領」には、

出展参加者は、パビリオンの企画、デザイン、設計及び建設(そのための事業者の選定を含む)から、展示物の設置、演出、大阪・関西万博開催期間中の運営、及びパビリオンや出展物の維持管理までの一連の行為について、自らの責任で実施していただきます。

と明記されている。日本国政府、地方公共団体、そして公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(万博協会)は、各国パビリオンの建設契約には関与しない。

なぜ、このような未払い問題が発生したのか。個別の事例ごとに個別の事情があるだろう。全てを網羅することは到底できないが、ここではその背景事情としていえそうなことをいくつか指摘しておこう。

あるパビリオンでは「建設許可ない大阪市の業者が工事関与」(「建設許可ない大阪市の業者が工事関与 休館のアンゴラ館 下請けに費用未払い、中止一因か」)との報道もあった。

大阪府の吉村洋文知事は、6月下旬に「アンゴラパビリオン工事で未払いの事実が確認できたとして、建設業者に適切な対応を行うよう建設業法に基づく勧告を行った」(「万博・パビリオン建設費の未払い問題 下請け業者らが会見 大阪府の回答に納得いかず再要望へ」)としている。

また、直近の報道によれば、大阪府は、「大阪市の建設会社が、法律に基づく営業の許可を受けていなかったとして・・・30日間の営業停止の処分にし」た、という(「万博 アンゴラパビリオン 無許可業者を営業停止処分 大阪府」)。

どうして大規模な国際イベントの工事に無許可業者が入ってくるのか。元請業者が海外政府や海外機関との建設取引に精通していない可能性はないか。海外パビリオンの発注者と国内の元請業者との間にコミュニケーション・ギャップはないか。あるいは元請業者が外国資本の企業だった場合、下請業者との情報共有は十分になされていたか。国内の法制度、法実務に熟知していたか、といった疑問が当然生じる。