つまり、高速回転する磁石で磁場を大きくかつ高速に変化させ、その大きな磁場変動の影響をレーザー光で正確に観察することで、これまで見逃されてきた小さな磁気反応を初めて検出することに成功したのです。
研究チームは、この新しい「フェリスMOKE」を用いて、いくつかの非磁性金属の薄い膜を作り、その表面にレーザーを当てるという実験を行いました。
今回使った金属は、銅、金、アルミニウム、タンタル、そして白金の5種類です。
これらは全て、磁石を近づけてもまったく反応しない、いわゆる「磁気とは無関係な金属」と考えられてきました。
ところが、この新しい測定方法によって、これらの金属の表面からも微弱な磁気信号が確かに検出されたのです。
さらに、この微弱な信号を詳細に調べると、いくつか興味深い特徴が明らかになりました。
最も驚くべきことは、検出された信号の中に、従来は「ただの雑音(ノイズ)」として見逃されてきたような小さな揺らぎが存在していたことです。
そして、このノイズの揺らぎ方が、金属の種類ごとに異なっていることも分かりました。
さらに詳しく分析すると、このノイズの大きさは「スピン軌道相互作用」という量子力学的な性質の強さと関連していることが明らかになりました。
このスピン軌道相互作用というのは、電子が持つ「スピン」という磁石のような性質と、電子が原子のまわりを回転する軌道の運動が互いに影響しあう不思議な現象です。
つまり、これまで実験で捉えられていたわずかなノイズが、実は電子の持つ微小な磁気性質から生まれた「磁気の囁き」そのものであった可能性が明確になったのです。
この驚くべき発見は、「磁石につかない金属」の中にも、これまで見過ごされていた新しい磁気現象が隠れているということを意味しています。
この新たに発見された「磁気の囁き」が私たちに示す、具体的な可能性や影響とはどのようなものでしょうか?
磁気のささやきがもたらす未来
