以来、この現象は電子機器や半導体デバイスの特性を調べるための基本的な測定方法として、現代のテクノロジーに欠かせない技術となっています。

ただ、このホール効果の強さは、金属の種類によって非常に大きく異なります。

鉄やニッケルのように磁石に強く反応する「強磁性金属」では、磁場により電流の流れ方が劇的に変化するため、「異常ホール効果」と呼ばれるほど強い反応を示します。

これに対して、銅や金、アルミニウムなどの非磁性金属では、磁場をかけても電気の流れが曲がる効果は極めて微弱であり、従来の測定方法では検出することが非常に困難でした。

理論的には、こうした微弱なホール効果も、特別な方法を使えば目に見えるように検出できる可能性があります。

例えば、金属に光を照射し、その反射された光を分析すれば、金属内の電子が磁場によってどのように動いているかを可視化できるのではないかと考えられています。

このように、ホール効果を光によって観察する方法は「光学ホール効果」と呼ばれています。

【コラム】なぜ光でホール効果がわかるのか?

「ホール効果」とは、金属の中を電気が流れているときに磁場をかけると、電気の流れがほんの少しだけ曲がるという現象です。これは、ちょうど川の水が岩にぶつかって流れの向きを変えるように、磁場という見えない「力」が電子の流れを曲げるから起こります。電子はある意味で極小の磁石であるため、磁場の影響を受けます。そして電子が流れる方向が少し曲がると、金属の中にある電子の配置が変わり、わずかな電気の偏りが生じます。この「電子の偏り」が起こると、金属の表面で光を反射したときに、その光がわずかに性質を変えることがあるのです。例えば、鏡を少し傾けると反射した光の向きが変わるように、電子の配置が変わると、反射された光の性質(特に偏光という光の振動の方向)がわずかに変化します。つまり、「光でホール効果がわかる」のは、電子が磁場によって少し曲げられると、金属表面での光の反射のしかたがごくわずかに変化するからなのです。