式は十時からで、芦田均憲法普及会会長のあいさつがあった。

驚いたのはそのあとで、尾崎行雄がマイクの前に立ったのだ。この人がむかし〈憲政の神様〉と呼ばれたことぐらいは知っていたが、生きているとは思わなかった。 (中 略) この日の尾崎の演説をぼくは記憶している。それはとても良いものだった。この日の人々のあいさつの中で唯一、記憶するに足るものだと思うので、新聞から引用する。

「私は本日のきびしい天候を、この新憲法施行の日のためによろこぶ。なぜならば、この天候のごとく、国家の前途は、たとえ新憲法ができても、むずかしい!」

単行本版、206頁

ここに「熱狂」はない。うおおおお国民主権! も、うおおおお戦争放棄! もない。では、なにが在るのか。

”主権潔癖症” が招き寄せる第三次世界大戦の足音|與那覇潤の論説Bistro
周知のとおり、6/13にイスラエルがイランを空爆し、交戦状態に入った。ウクライナ戦争と同様に当初、トランプの米国は両者に停戦を求めたが奏功せず、参戦の可能性さえ報じられ始めている。
イスラエルとイラン、攻撃の応酬続く イランは死者220人超と発表 - BBCニュース イスラエルとイランの対立は激しさを増し、...

まさに歴史であり、成熟でしょう。毎月、読めばよい意味で齢が重なるコラムをめざしますので、ご贔屓にしてくだされば幸いです。

1947年5月3日、 荒天の憲法施行式典での昭和天皇 (尾崎行雄記念財団のコラムより)

参考記事:

ウクライナ浪漫派の耐えられない猥褻さ|與那覇潤の論説Bistro
今年に入って2回、お会いした相手から「江藤淳のこの文章、いまこそ大事ですよね」と切り出されて、驚いたことがある。ひとりは『朝日新聞』で対談した成田龍一先生で、もうひとりはいまアメリカで取材されている同紙の青山直篤記者だ。 文章とは、江藤の時評で最も有名な「「ごっこ」の世界が終ったとき」。初出は『諸君!』の1970年...