「日本2%、東南アジア10%」EV普及のギャップに見いだす商機

 日本でのサービス導入を着実に進める一方で、同社が注力し始めたのが海外展開だ。2024年7月にタイ・バンコクで開催されたビジネスカンファレンスにブース出展したところ、現地企業からの引き合いが強かったことから東南アジアへの進出に着手。現在、同社が商談を進めるおよそ300社のうち1割が海外の事業者で、その反応は国内企業とまったく異なる。

「海外での商談はスピードも規模感も全然違います。スタートアップにとって必要なスピードとスケールが、どうしても日本は劣るところがある」(白木氏)

 その理由は市場環境の違いにある。日本のEV普及率はおよそ2%の一方、タイではすでに10%ほどまで増加。「インドネシアやマレーシアのEV普及率も、2024年からガッと上がってきています」と白木は説明する。

「例えばタイでは30・30政策(2030年までに国内で生産される自動車の30%をEVにすることを目指す政策)が掲げられるなど、東南アジアでは政府の脱炭素化に対する指針やEVの導入目標が、日本とは比べものにならないくらい高い目線で取り組まれています。そこに対して産業界もついてきている」(白木氏)

 さらに同氏は、「東南アジアでのEV普及率上昇の背景には、中国製のEVがどんどん流れ込んでいるという実情もあります」と付け加える。

 現在、マレーシアではオンデマンド交通事業者がeMotion Fleetのサービスを導入済みで、タイやインドネシアでも実証に興味を示す事業者が複数現れている。「需要が急速に増えているのに、その商機をみすみす逃したくない」と、同社は東南アジア市場での事業拡大を本格化させる方針だ。

アセットライトで攻める海外展開戦略

 eMotion Fleetの海外展開戦略の核となるのは、アセットライトなアプローチだ。

「ハードウェアを軸にした企業の場合、各国での販売に向けた認証の取得に時間とお金が必要です。しかし我々のようなソフトウェア中心のアセットライトなビジネスモデルなら、複雑なプロセスなしで迅速に事業展開できます」(白木氏)

 また、同社のソリューションがマルチブランドに対応できる点も海外展開において威力を発揮する。東南アジアで普及が進む中国メーカーのEVにも対応可能なため、その普及に合わせてサービスの導入を加速させることができるのだ。

 海外展開において重要な役割を果たしているのが、株主でもある自然電力との連携だ。

「我々は創業からまだ2年弱のスタートアップなので、あっちにもこっちにも人を分散して配置するのが難しい。その点、自然電力はタイ、インドネシア、マレーシアに現地法人があります。各地の現地法人にそれぞれの国の事業者に対するきめ細かな対応をお願いするなど、連携しています」(白木氏)

 海外展開についても日本と同様、ソフトウェアを起点にして段階的に事業を拡大。将来的には各国にeMotion Fleetの現地法人を設立しながら、包括的な“Fleet as a Service”としてのサービス提供を目指す。