また、相談者には「今後も困ったことがあればいつでも相談できる」ことを伝え、孤立させない体制を整えておくことが大切です。もし今後、状況が変化したり、より深刻な言動が発生した場合には、再度調査や対応を行う旨も伝えておきましょう。

まとめ

同僚間のパワハラは、優位性の有無が判断の大きなポイントとなります。

業務上の知識や経験、集団性、社歴や影響力、業務分担や雇用形態、身体的特徴など、さまざまな要素が複合的に絡み合うことで、同僚間でも優位性が認められる場合があります。

一方で、性格の強弱や体格の差だけでは原則としてパワハラは成立しません。

たとえ法的なパワハラに該当しない場合でも、会社は職場環境の維持・改善に向けて積極的な対応を取る必要があります。相談者への丁寧な説明と心理的サポート、相手方への指導、職場全体のコミュニケーション改善など、多面的なアプローチが求められます。

「パワハラでなければ放置してよい」ではなく、従業員が安心して働ける職場づくりが、すべての会社に求められています。

李 怜香 社会保険労務士・産業カウンセラー・ハラスメント防止コンサルタント 岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。1999年、宇都宮市にて李社会保険労務士事務所(現 メンタルサポートろうむ)を開業。2011年、産業カウンセラー登録。2012年、ハラスメント防止コンサルタント認定、(公財)21世紀職業財団ハラスメント防止研修客員講師に就任。2019年、健康経営エキスパートアドバイザー認定(第1期)。 官公庁から大手企業、教育機関まで幅広い分野で研修実績がある、ハラスメント対策のエキスパート。ハラスメント外部相談窓口の相談対応や、事案解決支援の経験を活かした実践的な指導には定評があり、研修受講者からの満足度は90%以上。法的知識とカウンセリングスキルを組み合わせた独自のアプローチで、職場のメンタルヘルスやハラスメント防止の分野で、企業をサポートしている。