たとえば、古参社員が「現場の慣習」などを理由に、新人に過剰な雑務や掃除を強要するケースなどが該当します。

業務分担や役割による優位性

業務上、特定の同僚の協力が不可欠な場合、その同僚が協力を拒否したり、必要な業務情報を意図的に渡さないことで優位性を発揮するケースもあります。

プロジェクトのキーパーソンが、気に入らない同僚にだけ重要な資料を渡さない、業務連絡をしないなどの行為がこれにあたります。

雇用形態の違い

同じ職場であっても、正社員と契約社員、派遣社員など雇用形態に差がある場合、立場の違いを背景に優位性を持つケースもあります。

たとえば、正社員の同僚が契約社員や派遣社員に対し、業務を一方的に押し付けるといった行為です。

身体的特徴や腕力の差

体格や腕力の差がある場合、特に威圧的な態度や暴力的な言動が伴えば、身体的な優位性が認められることがあります。

たとえば、体格差を利用して威圧的な態度を取る、物理的な距離を詰めて圧力をかけるなどです。ただし、単に体格差があるだけでは優位性とされにくく、言動や状況によって判断されます。

性格や体格の差だけでは優位性があると認められない

体格差だけでは優位性とされにくいとしましたが、性格の強弱についても同じことが言えます。

単に性格がきつい、気が弱い、体格が大きいといった主観的な要素だけでは、パワハラの成立要件である優位性に該当しないというのが判例の基本的な考え方なのです。

性格や体格の差が、集団性や業務上の関係性と結びつき、実質的な力関係を生み出している場合は、例外的に優位性が認められることもあります。

しかし、こうしたケースはあくまで例外であり、ほとんどの場合は性格の強弱や体格の差だけでパワハラとは認定されません。

パワハラ不成立の場合、会社が取るべき対応

それでは、他のふたつの要件(「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「労働者の就業環境を害する」)は該当していても優位性が認められず、パワハラとしては成立しない場合、会社はどのように対応すべきでしょうか。