ここで重要なのは「パワハラに該当しないから何もしなくてよい」という考え方を取らないことです。たとえ法的なパワハラに該当しなくても、職場の人間関係トラブルや心理的負担が放置されると、生産性の低下や職場全体の雰囲気悪化、さらには離職やメンタルヘルス不調といった深刻な問題につながる可能性があります。

1. 誠実に調査する

まず、会社としては相談があった時点で、事実関係を丁寧に調査し、当事者双方や周囲の同僚からも事情を聴取します。

そのうえで、パワハラには該当しない場合、その理由を相談者に分かりやすく説明し、納得感を持ってもらうことが大切です。このプロセスを丁寧に行うことで、相談者の不信感や不満を和らげることができます。

2. 相談者への心理的なサポート

相談者が心理的なストレスや不安を抱えている場合には、産業医やカウンセラーによる面談を案内したり、必要に応じて一時的な業務負担の軽減や執務場所の分離など、柔軟な配慮を検討します。被害を訴えた人が安心して働ける環境を整えることは、会社の大切な責任です。

3. 相手方に威圧的な言動等があれば注意する

相手方の言動に業務上不適切な点や、職場の雰囲気を悪化させるような要素が認められる場合には、個別に注意や指導を行い、今後の言動に注意するよう促します。

特に、感情的な言動や威圧的な態度が見られる場合は、コミュニケーション研修やアンガーマネジメントの受講を促すなど、再発防止のための教育的な対応も有効です。

4. 職場全体のコミュニケーションの改善

職場全体でのコミュニケーション改善も重要です。トラブルの背景にコミュニケーション不足や相互理解の欠如がある場合には、雑談しやすい雰囲気づくりや、職場全体を対象としたコミュニケーション研修、心理的安全性を高める取り組みを行うことが、根本的な解決につながります。

5. 事案終了後のフォロー

対応の経緯は必ず記録に残し、今後同様の相談があった場合の参考とします。