このデータベースには、世界中のほぼすべての地域において使われている約5,293の言語(ISOという国際規格で分類されている言語数)に加え、それらの方言や地域変種まで幅広く収録されています。
研究者たちはこのデータから、それぞれの言語における単語を構成する音素(音を区別する最小単位)を調べ、それらの音素がどれだけ響きやすいかを数値化して平均した「平均ソノリティ指数(Mean Sonority Index, MSI)」という値を計算しました。
このMSIは直感的に言うと、母音の多い単語ほど響きがよく、子音ばかりが続く単語は響きが弱くなる、というようなことを数値で表した指標です。
このMSIを各言語ごとに世界地図に当てはめ、その地域の年間平均気温との関連性を詳しく調べました。
その結果、予想をはるかに超えて明確なパターンが現れました。
赤道に近い暖かな地域ほど、そこで話される言語のMSI値(響きやすさ)は明らかに高かったのです。
特にオセアニア地域(ポリネシアなどの南太平洋の島々)やアフリカの言語はMSIが非常に高く、母音を多く含む豊かで響きやすい発音の特徴が目立ちました。
逆にMSIが最も低い地域は、カナダのブリティッシュコロンビア州からアメリカのワシントン州付近にまたがる北米北西海岸に位置する、サリッシュ語族という先住民の言語でした。
この地域の言語は子音が連続して並ぶ単語が多く、響きが少なく、詰まったような発音が特徴的でした。
一方、中央アメリカや東南アジアの一部の地域では、「暑い地域にも関わらず、MSIが低い」という例外的な結果もありました。
しかし研究チームは、「いくつかの例外はあるものの、全体としては世界的にみて、平均気温が高い地域の言語ほど響きが豊かでソノリティが高いという明確な相関関係を見いだした」と述べています。
実際に統計的な分析でも、年間の平均気温が高くなるにつれて、言語のソノリティも明らかに高くなることが確認されました。