似た者同士でも上手くいくだろう。が、自分にないものを相手に求める付き合いも長続きする。「割れ鍋に綴じ蓋」というではないか。傍(他社)からは割れてない様に見える鍋(自社)は、割れているとの自覚があるから、綴じ蓋(他社)を探し求める。そして、求められた側の鍋が割れていなければ、綴じ蓋は要らない。この場合、取引が成立する。日鉄のUSS買収が真にそうであるように。

安全保障問題で日本は残念ながら「割れ鍋」だ。だから日米安保条約による米国の核の傘(=綴じ蓋)が必要なのである。日米両軍が合同して緩急に備えるには、防衛装備品(武器)が日米共通でなければ役に立たない。まして学術会議は異様にも日本の武器研究を阻んで来た。この分野で日本は、多くを米国から購入するしかない。

だのに、石破氏は4月21日の衆院予算員会で、「(関税交渉と)安全保障の問題をリンクさせて考えるべきだと思っていない。分けて議論していかないと事の本質がおかしくなる」と述べた。が、そもそもそんな手の内を予算委員会で見せるなど烏滸の沙汰だ。4月19日の『時事通信』は、「(思いやり予算の増額が)関税協議の『交渉材料』とされることへの警戒感が日本側にある」と報じていた。

が、NATO加盟国とトランプとのやり取りで判る通り、関税交渉があろうとなかろうと安保条約がある以上、日本はこの問題を避けて通れない。であるなら、先手を打って積極的に米国から必要な武器を買えば良いし、返す刀で「核ミサイル付き原潜の購入」を申し出れば良いのだ。それさえあれば、米軍の駐留は最低限で済むはずで、真に「割れ鍋に綴じ蓋」なのである。

そして「日鉄のUSS買収」。7月17日の『日経』の特集「USスチール攻防550日(3)」は、こう書き出されている。

「民間の話だから(政府は)表に出ないです。」日本製鉄がUSSの買収を発表した2023年12月、日本政府は内部で方針を確認した。経済官庁幹部は「日鉄が日本政府と結託している、と誤解されれば買収実現に得策ではないと考えた」と語る。