野党と「国難を打破できる新たな政治の在り方について一致点を見いだしたい」と言うが、ならば先の国会期間中一体何をしてきたのか。「自民」を衆院で少数与党に陥らせたから、野党に諸々妥協せざるを得なかったのではなかったか。更にこの上、政策が「自民」のそれよりも国民に支持されていないからこそ、今般「比較第二党」以下に甘んじた野党の政策を飲み続けるというのか。
とすれば、「いばらの道」を歩むのは「自民」を「比較第一党」に選んだ国民であって、断じて「自民」ではない。国民にしてみれば、選挙で選ばなかった「比較第二党以下の野党」の政策をやられた日には、それこそ堪らないのである(本欄の賢明な読者はお気付きと思うが、この論は石破氏の屁理屈に対し、筆者が屁理屈を述べたのであって、結果は自民の政策が支持されていないことを示している)。
いずれにせよ、野党と「新たな政治の在り方について一致点を見いだしたい」と言うなら、さっさと下野し、野党に政権を担わせれば良いのである。政権に恋々とするのは見苦しい。
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石破氏は対米関税交渉についても、「8月1日の新たな節目も念頭に、関税でなく投資という考え方を基盤に日米双方にとって利益となる合意を実現する」と述べた。そこで最後に、この交渉が上手くいくはずがないことを予感させた、石破政権の当初の誤った方針について述べる。
それは「安全保障」と「日鉄によるUSスチール(USS)買収」という二つの問題を、石破政権が当初から「関税交渉と切り離す」方針を採ったことだ。筆者にいわせれば、この二つの問題こそが、目下の「日米双方にとって利益になる合意」そのものなのである。
「人vs.人」であろうと、「会社vs.会社」であろうと、「国家vs.国家」であろうと、結果が「0対100」になるような一方的な交渉が成立することはあり得ない。成立するのは、双方が「自分の方が得をした」と思える条件の場合だけだ。そんな条件は一見、あり得ないように思える。が、あり得るからこそ、日々、世界中で様々な取引が成立しているのである。