③ 仕事の切り離し。②の問題を解決できた人は、仕事を真剣に考えなくなり、仕事との距離を置くようになります

こうして、感情労働を提供するサービス業に従事する人は、心のバランスを崩してしまう人もいます。

カスタマーハラスメント(カスハラ)が昨今、大きな問題になっているのは、こうした要因もあります。

人間に大きな負荷を強いる感情労働は、様々な問題を生み出しているのです。

しかしAIにとって感情労働の負荷は特に大きくはありません。

検索した知識を伝えるのも、相手の感情を理解した文章を返すのも変わりがないからです(後者の方がロジックが複雑になりそうなので、もしかしたら消費電力は高くなるかもしれませんが、まぁ、その程度です)。

AIはストレスを感じないのです。しかも24時間対応でき、同じ質問を何十回しても、ちゃんとあの手この手で、相手が理解できるように辛抱強く答えてくれます。

つまり、AIではカスハラと言う概念が存在しません。

こう考えると、むしろ

「AIだからこそ、人間よりも感情労働に向いている」

…ようにも思えます。

AIは、あたかも人に深く共感しているように振る舞います。

しかし実際には、膨大な情報を処理してパターン化し、「共感しているように振る舞う方法」を身につけているに過ぎません。

あまりにも多くのパターンを学んでおり、しかも感情によるブレがなく、疲労もしないので、人間から見ると「何があっても動じず、自分のことだけを考えてくれて、徹底的に尽くす、信頼できる相手」に見えます。

しかし「それは辛かったですね」とAIが言ったとしても、実はそれは記憶したパターンとして返しているだけで、AIが心から相手に共感しているわけではありません。

言い換えれば、深層演技のように見えますが、実際には表層演技なのです。ただその表層演技は、広く、かつ深い情報に基づいています。

冒頭で挙げた二つの事例は、そんな対応でも、大きな価値を感じている人たちです。当然、こうした仕組みもご存じなのでしょう。それでも号泣したり、「結婚したい」と考えるのです。