繰り返しマイクロプラスチック入りの餌を食べ続けると、本当にそれを「好きな餌」として積極的に選ぶようになってしまうのでしょうか?

調査にあたっては、まず線虫(Caenorhabditis elegans)が用意され、マイクロプラスチック汚染餌を数世代にわたって食べさせる実験が行われました。

すると最初は清潔な餌を好んでいた線虫が、複数世代の曝露を経て、汚染餌を積極的に選ぶように行動が変化しました。

これは、まるで人間が特定の味に慣れて「やみつき」になるように、線虫も汚染餌を好むように「学習」してしまったことを示唆します。

興味深いのは、この変化が遺伝的変異ではなく「学習によるもの」である証拠もある点です。

具体的には、嗅覚に関与する遺伝子 odr‑10 や、学習能力に必要な遺伝子 lrn‑1 を持つ変異体では、この嗜好の変化が見られませんでした。

つまり、臭いによる経験が、「汚染餌 = 報酬」として記憶され、それが後の行動選択に反映されている可能性が高いのです。

また、土壌環境を模したマイクロコスモス実験でも、線虫が汚染餌のある場所へ移動し、採食行動を起こす様子が観察されました。

これによりラボ環境のみならず、自然のような環境下でも同様の行動変化が起きうると確認されました。

この結果は単なる錯覚ではなく、明確な行動変容として定着しうることを示しています。

たとえば、海洋生態系ではプランクトン → 小魚 → 大型魚へとマイクロプラスチックが食物連鎖を通じて移行することが知られていますが、本研究では、その下位の生物がプラスチック混じりの餌を「学習」して好むようになることで、上位の生物にまで影響が波及する可能性を示唆しています。

研究チームは、「この学習による嗜好変化が広がれば、最終的には人間の食生活にも影響を及ぼしうる可能性がある」と指摘しています。

地球には「真の意味」でのゴミ捨て場は存在しません。