通常、FOSを与えるだけではラクトバチルス属はほとんど増えませんが、断食直後に与えると劇的な効果が出ました。
まるで荒れた土地(断食後の腸)に、乳酸菌が好む栄養を与えることで、一気に乳酸菌が元気に繁殖を始めるようなイメージです。
他にもガラクトオリゴ糖(GOS)やα-シクロデキストリン、さらにヒトの母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖(HMO)を与えると、それぞれ異なった細菌が増殖しました。
HMOを与えた場合には、乳酸菌だけでなくビフィズス菌に近いグループや、パラバクテロイデスという種類の細菌も増えました。
つまり、「どの細菌を増やしたいか」を決めて、それに最適なMACsを選ぶことによって、腸内の細菌叢をかなり精密に操作できる可能性が示されたのです。
さらに研究者たちが注目したのは、この作戦による腸の免疫機能への影響です。
腸の免疫を守る役割を持つIgAという抗体に着目して調べたところ、断食後にFOSを与えたマウスでは、糞便中のIgA量が通常のマウスに比べて約18倍という非常に高い値にまで上昇していました。
実はFOSとラクトバチルス属の組み合わせが腸のIgA産生を高めることは以前から知られていましたが、今回の研究では「断食後に与える」という新しいタイミングが、これまでにないほど強力にIgAを増やしたのです。
論文でも『FOSの摂取とラクトバチルス属の存在が腸管でのIgA産生の増強と関連する(FOS intake and the presence of Lactobacillus is associated with enhanced IgA production)』と報告されています。
これは、腸内の細菌の変化だけではなく、腸の免疫力そのものも短期間で大幅に改善できる可能性を示しています。
薬に頼らない新・腸活法の可能性と課題

今回の研究によって、「断食で腸内細菌叢をリセットし、狙った菌を短期間で選択的に増やせる可能性があること」が示されました。