では実際に、この斬新な作戦はうまくいったのでしょうか?

36時間の絶食で腸内環境はこう変わった

36時間の絶食で腸内環境はこう変わった
36時間の絶食で腸内環境はこう変わった / Credit:Canva

「腸内フローラのリセット&狙い撃ち給餌作戦」は本当にうまくのか?

答えを得るため研究者たちはまず、マウスの腸内細菌の変化を詳しく調べることにしました。

具体的には、健康なマウスをいくつかのグループに分け、それぞれ異なる条件を与えて、腸内環境がどのように変化するか観察しました。

あるグループのマウスには通常どおりのエサを与え、別のグループにはエサを全く与えずに36時間の断食をさせました。

さらに、断食させたグループの中でも、一部のマウスには断食の最中にMACs(腸内細菌利用糖)を与えました。

こうすることで、MACsが断食による腸内細菌の変化にどう影響するのかを確かめたのです。

実験を開始すると、まず「断食」そのものに驚くべき効果が現れました。

わずか36時間食事を止めただけで、マウスの腸内細菌の構成は劇的に変化したのです。

ただし、細菌の種類自体が減ったというよりは、もともと腸にいる細菌の割合が大きく変わりました。

これまで優勢だった細菌が激減し、一方で別の細菌が一気に勢力を広げる、まるで細菌同士の主導権争いが起きたような現象でした。

通常、腸内の細菌バランスは非常に安定していますが、断食という強烈なストレスによって、一時的にこのバランスがリセットされたような状態になったのです。

では、この「リセット状態」の腸にMACsを与えると何が起きるのでしょうか?

ここで研究チームは興味深い結果を発見しました。

実は断食直後の腸内細菌叢に与えるMACsの種類によって、増える細菌が全く違ったのです。

特にフラクトオリゴ糖(FOS)という種類のMACsでは、腸に良い影響をもたらすことで知られる「ラクトバチルス属(乳酸菌の一種)」が非常に顕著に増殖しました。