この現象がいわゆる「ビッグバウンス」であり、崩壊した宇宙が再び新たな宇宙として生まれ変わるシナリオです。
このような理論がもし正しければ、私たちの宇宙も過去に崩壊した別の宇宙の内部から、まるでブラックホールの反対側に弾き出されるように誕生したのかもしれません。
言い換えると、「私たちの宇宙は、別の宇宙が生み出したブラックホールの中から誕生した可能性もある」という驚くべき可能性が生まれます。
ところがビッグバウンスには大きな疑問もあります。
特にエントロピー(熱的無秩序)の問題です。
宇宙が一度収縮に向かうと、星や銀河はブラックホールに飲み込まれ、エントロピー(乱雑さ)はどんどん増大します。
熱力学第二法則によればエントロピーは時間とともに増大こそすれ、自然に減少することはありません。
では、崩壊しきって極限まで乱雑になった宇宙が、どうやって再び低エントロピー(秩序だった)状態の新宇宙へと生まれ変われるのでしょうか?
この疑問は以前から指摘されており、ビッグバウンス理論の弱点の一つと考えられてきました。
そこで今回研究者たちは、量子力学の視点から宇宙の輪廻転生を起こす「ビッグバウンス理論」が成り立つのか、それとも否定されるのかを、再検証することにしました。
量子力学が「宇宙の輪廻転生」に突きつけた冷徹な事実

量子力学の視点からみた「ビッグバウンス理論」の是非とは?
この大きな謎を解明するため、研究者たちはまず、一般相対性理論に量子力学の原理を組み込んだ新しい視点から宇宙を解析することにしました。
その際に重要となったのが、「一般化第二法則(GSL)」と呼ばれる考え方です。
一般化第二法則とは、ブラックホールを含めた宇宙全体の「乱雑さ」(エントロピー)は決して減らず、増加または一定のままであるという物理法則です。