私たちの宇宙が始まる前にも別の宇宙が存在し、それが収縮(ビッグクランチ)して一点に近づいたときに、量子力学の効果で再び反発(バウンス)して新しい宇宙が生まれる、というわけです。

宇宙そのものが輪廻転生するイメージと言えるでしょう。

このビッグバウンスモデルにはいくつかの魅力があります。

第一に、完全な特異点の形成を回避できる可能性があることです。

無限大の密度に到達する前に量子効果が働けば、特異点の問題を避けて宇宙を説明できるかもしれません。

第二に、多くの人が抱く「ではビッグバンの前には何があったのか?」という一般の人の素朴な疑問にも「前の宇宙があった」と答えられるため、科学的にも物語的にも興味を惹くものでした。

他にもループ量子重力理論などのアプローチでは特異点を回避してビッグバウンスを起こせる可能性が示唆されています。

ループ量子重力理論では、時空は滑らかで連続的なものではなく、非常に小さなスケールでは「量子的に粒状の構造」を持っていると考えます。

言い換えると、時空を無限に細かく分割していってもある一定の小ささでそれ以上分割できない「最小の長さ」が現れます。

のため、時空やエネルギーの密度が無限に小さな一点に集中することができなくなります。ちょうど砂浜の砂粒をいくら集めても点にならず、小さな砂の塊になるように、密度が無限に高くなることが自然に防がれるわけです。

この量子的な粒状構造によって、ブラックホールの中心に向かって重力が無限大に強くなる途中で、「量子効果による反発力」が働く可能性が生まれました。

これはあたかも、バネが縮めば縮むほど強く反発するように、密度がある限界を超えようとすると、量子レベルで新たな力が生じて圧縮を押し返すという仕組みです。

その結果、宇宙は一点に潰れてしまう前に、ある大きさで収縮を止めてしまうのです。

こうして収縮が止まった宇宙は、次の瞬間にはまるで反動をつけてバネが弾けるように、再び急激な膨張を始める可能性があります。