このスコアはマサチューセッツ総合病院のバイオバンク約4万8千人のデータを使って検証され、自分がどの肥満タイプになりやすいか、また将来的な健康リスクをどの程度予測できるかが確認されています。
このスコアは既に公開されており、今後さらに研究や医療で役立てられる予定です。
こうして肥満の遺伝的な謎を大きく解き明かした今回の研究ですが、具体的に各タイプの肥満にはどのような遺伝的なメカニズムが働いているのでしょうか?
肥満治療が画一的だった時代は終わり

肥満を「遺伝的に11種類に分類できる」という発見は、医学・健康分野において様々なインパクトをもたらすと期待されます。
最大のポイントは、「肥満は一つではない」という認識が広まることでしょう。
例えるなら、肥満は発熱のような症状であって、その原因は一つとは限らないということです。
風邪なのかインフルエンザなのかで適切な対処が違うように、肥満もタイプごとに適した治療法や予防策が異なる可能性があります。
従来、肥満対策というと食事療法や運動指導が画一的に行われがちでした。
しかし、中には「免疫系の問題で太りやすい人」や「脳の満腹中枢の働き方に特徴がある人」がいるかもしれません。
そうした人々には、それぞれのメカニズムに合わせたアプローチ──例えば抗炎症作用を意識した食事や食欲を調節する薬の活用など──が効果的となる可能性があります。
今回の研究は、肥満治療をより個別化し“オーダーメイド医療”へと近づける科学的基盤を提供したと言えるでしょう。
また、この発見は肥満に対する社会的な見方にも影響を与えるかもしれません。
肥満は往々にして本人の努力不足や自己管理の問題と捉えられがちでした。
しかし、遺伝的タイプの存在が明らかになれば、「太りやすさ」は人それぞれ異なる生物学的背景を持つことへの理解が深まるでしょう。