二つ目が「代謝的に不健康な肥満」というタイプで、肥満に加え糖尿病や脂質異常など健康リスクが高い人たちを指しています。

今回の研究によって、これらが単なる臨床的な分類にとどまらず、遺伝子レベルでも異なることが初めて明確に裏付けられたのです。

さらに重要なのは、残りの9種類の肥満エンドタイプが今回初めて発見されたということです。

これらには、インスリンの働きが異常に強いタイプ、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞の機能が高まったタイプ、免疫システムに異常があるタイプ、脳やホルモンの調節に問題があるタイプ、脂肪の処理能力が異常なタイプなどがあります。

専門的にはそれぞれ、「インスリンの作用が強いタイプ」「膵臓のβ細胞がよく働くタイプ」「免疫機能が乱れているタイプ」「脳やホルモンの調節に特徴があるタイプ」「脂質の代謝に異常があるタイプ」などと表現できます。

これら11のタイプは、それぞれ異なる健康リスクやバイオマーカー(血液中のホルモンや代謝物質)の特徴を持っており、将来的にどんな健康経過をたどるかも異なります。

加えてあるタイプは糖尿病になりやすく、別のタイプは心臓病になりやすいなど、それぞれが特有の健康リスクを抱えていることが判明しました。

さらに研究チームは、各タイプごとに主に影響を及ぼす遺伝子の働く部位が違うことも突き止めました。

あるタイプの肥満では脳の中枢神経系に関係する遺伝子が多く働き、食欲や代謝のコントロールに関係していました。

また別のタイプでは脂肪組織や免疫系に関係する遺伝子が主役となっていました。

このように、肥満という状態が実に多様で複雑な仕組みを持つことが遺伝子レベルで解明されたのです。

この重要な発見を医療の現場で役立てるため、研究者たちはさらに一歩進めました。11種類のエンドタイプごとに、自分がどのタイプの肥満に当てはまりやすいのかを簡単に判定できるよう、「分割ポリジェニックスコア(pPS)」と呼ばれる遺伝的リスクのスコアを開発しました。