これは、受精の瞬間に母親の体内環境(例えば膣内の酸性度や体温、排卵のタイミング)が影響して、X染色体かY染色体のどちらかを持つ精子の受精率が変化するという考え方です。
しかし、こうした説は一見もっともらしく聞こえますが、大規模なデータ分析や疫学調査で明確に裏付けられたことはありませんでした。
また、出生時の性別に関係する遺伝的要因についても、十分な研究は行われていませんでした。
そこで今回、ハーバード大学の研究チームは大規模なデータを活用し、この「家庭ごとの性別の偏り」の真相に本格的に挑むことにしたのです。
果たして、性別の偏りは本当に単なる偶然に過ぎないのか、それとも何か科学的な根拠があるのか——?
そして、もし科学的な理由があるとすれば、それはいったいどのようなメカニズムで起きているのでしょうか?
3人の子どもが同じ性別であれば4人目も同じ性別が生まれる確率は約60%

カップルや母体の条件によって、生まれやすい性別があるのか?
この謎を解明するために、研究者たちは分析の単位を個々の出産から各母親に切り替えました。
従来の研究の多くは出生ごとにデータを集計し、性別とさまざまな要因との関連を探していました。
しかし、それでは家族内に存在するかもしれない性別の偏りパターンが見逃されてしまう可能性があります。
そこで研究チームは、家族(母親)ごとに見たときに、子どもの性別が本当に公平なコイントス的な確率分布に従うのか、それとも母親ごとに偏り(ばらつき)があるのかを検証することにしました。
さらに、もし偏りがあるとすれば、どのような要因が「男の子ばかり」や「女の子ばかり」をもたらすのか(例えば遺伝的な体質なのか、母親の年齢などの属性なのか)を探ることにしました。
調査にあたってはまず、各母親について子どもたちの性別の並びを分析し、その分布を「期待されるランダム分布」と比較しました。