ファンは、スクリーンタイムの管理、信頼できる情報の識別、ポジティブなオンライン交流の促進といったデジタルウェルビーイングのスキルを身につける必要がある。コンテンツクリエイターやプラットフォームも、より強力なコミュニティガイドラインとモデレーションを実装し、ユーザーがデジタルエンゲージメントを管理するためのツールを提供することで、健全なオンライン環境を育む役割を担っている。

2.7 健全な「推し活」のための提言

健全な「推し活」を続けるためには、適切な予算管理が不可欠である。月々の収入の中から「推し活予算」を決め、それ以上は使わないというルールを設けることが推奨される※8)。自分の生活が脅かされるほど「推し活」にお金をつぎ込むことは本末転倒であると警鐘が鳴らされている※8)。

また、SNS上での攻撃的な発言や誹謗中傷は避けるべきであり、個人情報の管理にも細心の注意を払う必要がある※8)。自身の限度を知り、他人と過度に比較せず、他者の「推し方」を受け入れ、自身の言動がどう思われるかを客観的に考えることが重要である※14)。

金銭的な問題に直面した場合、早期に弁護士に相談することが推奨される。「推し活」による借金は「趣味だから問題ない」と放置されがちだが、対応が遅れるほど解決は困難になる※13)。弁護士は、任意整理、個人再生、自己破産など、状況に応じた最適な債務整理方法を提案し、債務者への直接の取り立てを停止させることで精神的な余裕を取り戻す手助けをしてくれる※13)。

精神的な側面では、心理カウンセラーが「推し活のときの自分」と「現実の自分」を健全に切り替えるための「心の部屋」を持つことを提案しており、これにより燃え尽き症候群を防ぎ、メンタルヘルスを維持できるとしている※10)。

健全な「推し活」を促進するためには、個人の教育だけでなく、業界の責任と、強固な社会支援システムの両方が必要である。個人の努力だけでは「推し活破産」のような深刻な問題を防ぎきれない事例が多発しているため※13)、問題は個人の自己管理能力だけでなく、過度な消費を誘発するマーケティング手法や、安易な借入を可能にする金融サービスといったシステム的要因にも起因していると考えられる。