ライブチケットやグッズのために借金をする行為も危険視されている※8)。20代女性がアイドル活動にのめり込み自己破産に至った事例や、全国ツアー全通のために極端な節約生活を送るファン、総額3,000万円以上を費やしたファンなどの実例が報告されている※13)。

金銭トラブルの背景には、出費の仕組みが見えづらいこと、他のファンとの比較による競争意識、借金の「自転車操業」化、消費感覚の麻痺などが挙げられる※13)。

「推し活」は仲間との共感を深める一方で、競争心、価値観の相違、対立といった人間関係の悩みを生むこともある※12)。SNSの普及は、情報過多による「反応疲れ」を引き起こしたり、匿名性を盾にした攻撃的な発言や誹謗中傷、個人情報の不用意な公開といったリスクを高めている※1)。

チケット転売仲介サイトでの高額購入トラブルや、SNSで知り合った個人への送金後の連絡不通、配信サイトでの「投げ銭」による借金問題など、具体的な金銭トラブル事例も報告されている※15)。

「推し活」市場は経済的に活況を呈する一方で、特に心理的に脆弱な個人に対する消費者保護に関して重大な倫理的課題を抱えている。

ファンが「推しのためなら」という感情的な動機に基づいて行動する傾向があるため※8)、企業側の「ランダム商法」や「希少性・特別感の強調」といった消費を促す戦略※13)は、ファンの金銭感覚を麻痺させ、過剰な支出につながりやすい※13)。

これに加えて、スマートフォンアプリからの容易な借入やリボ払いのリスク認識不足※13)が重なることで、自己破産※13)を含む深刻な個人的苦境につながる可能性がある。これは、特定の販売慣行に対するより厳格な規制と、ファンへの金融リテラシー教育の改善を求めるものである。

オンラインでの「推し活」が増加するにつれて、デジタルリテラシーとセルフケア戦略が健全な「推し活」の極めて重要な側面となる。SNSは「推し」の魅力を広め、ファン同士の交流を促進する強力なツールである一方で※1)、情報過多による疲労※1)、匿名性による誹謗中傷※8)、そして「推し活自慢」や「マウント文化」による過度な競争と心理的圧力※13)を生み出す諸刃の剣である。