新型コロナウイルス感染症の影響でリアルイベントの機会が減少したこともあり、「グッズ代が高くなった」と感じる人が約9割に上り、支出が増加傾向にある※3)。この背景には、世界的な物価上昇や製造・物流コストの増加がある※3)。「推し活」における消費は、単なる趣味の域を超え、K-POPグループの世界観を基にした「ウィッシュコア」ファッションのように、生活スタイルや価値観の表現手段として社会に深く根付いている※3)。

この文化的特性は、莫大な経済活動を促進する一方で、「推し活」に伴う金銭的リスクの大きな要因ともなっている。「推しへの愛情表現=消費」という認識は、ファンが自身の献身を示すために経済的に無理をしてしまう状況を生み出す可能性がある※1)。特に、「ランダム商法」や「希少性・特別感の強調」といったマーケティング戦略※13)は、ファンの消費感覚を麻痺させ、過剰な出費を助長する。

さらに、「同担拒否」や「ファン内マウント文化」といったファン間の競争意識も、経済的な無理を強いる要因となる※13)。これは、「推し活」コミュニティ内での金融リテラシー教育の必要性を示唆している。

このトレンドは、従来のグッズ販売にとどまらない新たなビジネス機会を創出している。ファンが自身のアイデンティティを「推し」と結びつけ、その世界観を体験しようとする傾向が強まっているため、テーマ型イベント、聖地巡礼ツアー※5)、ライフスタイル製品など、ファンが「推し」の世界観を体験し、自身のアイデンティティを表現できるような商品やサービスが求められている※3)。

これはまた、「推し活」が強力な帰属意識と自己表現の手段を提供し、個人のアイデンティティと消費選択を形成する上で強力な力となっていることを示唆している。

2.6 「推し活」に潜むリスクと課題

「推し活」には、グッズやチケットの購入、遠方への遠征など、多大な出費が伴う※4)。これらの出費をコントロールできない場合、深刻な金銭問題に発展する可能性がある。特にオンラインゲームやアプリ内課金では、「推しのためなら」という気持ちから多額の課金をしてしまうケースが少なくない ※8)。