「推し活」の社会的側面は複雑である。オンラインコミュニティやイベントへの参加は、共通の興味を持つ「仲間」との強い絆を育み、共感や情報共有を通じて楽しさを倍増させる機会を提供する ※12)。

しかし、同時に、ファン間の競争心、価値観の相違、対立といった人間関係の悩みを生むこともある※12)。また、一部のファンは自身の活動を周囲に隠す「隠れファン層」として存在し※9)、人間関係のトラブルを避けるために「一人で楽しむ」選択をする者もいる※12)。

交流に対する理想が現実と乖離したり、競争意識が喚起されたりすると、無力感や自己肯定感の低下を招く可能性も指摘されている※9)。これは、ファンが自身のエンゲージメントレベルを選択する個人の主体性の重要性と、プラットフォームやコミュニティが包括的で尊重し合う環境を育む必要性を浮き彫りにしている。

2.5 「推し活」における消費行動と文化的特徴

日本の「推し活」は「消費型」が特徴とされ、グッズやCDの購入、ライブ参加など、「推し」のためにお金を大量に費やす傾向がある※1)。アイドルグループの握手券のために同じCDを大量購入する行為は、この消費型の典型例として挙げられる※1)。日本では、「推しへの愛情表現=消費(お金)」が一種のバロメーターになっていると考えられている※1)。

一方、海外の「推し活」は「参加型」が特徴で、好きなキャラクターに扮するコスプレや、「推し」について熱くプレゼンするなど、その世界観に深く入り込む「没入型」が多く見られる※1)。

「推し活」は消費行動に顕著な変化をもたらしている。持ち運びがしやすく、オリジナリティがありながらも可愛さやおしゃれさを兼ね備えた機能性の高いグッズが支持される傾向がある※7)。カラオケ店で「歌わない」プランが人気を集め、「推し色」を選べるドリンクやハニートーストを提供するなど、新たな楽しみ方が生まれている※1)。