「推し活」は精神的健康に良い影響を与えることが指摘されている。

先行研究では、「推し」がいる人の方が人生に対して前向きな気持ちを感じる傾向があり、「熱狂的ファン層」は日常生活の充実感や精神的健康が高い傾向が見られる※9)。これは、「好き」という感情が心を活性化させ、ストレス解消やメンタル安定につながるためであり、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が関係している※1)。心理カウンセラーも、「推し活」は、現実の制約や不満から一時的に距離を置き、心を切り替えるための「素晴らしいエッセンス」として機能すると指摘している※10)。

一方で、「推し活」には「推し疲れ」のリスクも伴う。主な原因としては、SNSによる情報過多とそれに対する反応疲れ、グッズ購入やイベント参加による過度な出費、睡眠不足や食事の疎かさといった私生活とのバランスの崩壊が挙げられる※1)。

また、リアルな「推し」の場合、結婚や熱愛発覚、グループ脱退などの出来事が精神的な苦痛となり、「推し活」自体が辛くなることもある※1)。心理カウンセラーは、「推し活のときの自分」と「現実の自分」の境界線が曖昧になるとネガティブな感情が生まれやすくなると警鐘を鳴らし、心の中に「推し活」「仕事」「恋人の前」といった「部屋」を想像し、それぞれのドアを適切に開閉することで健全なバランスを保つことを提言している※10)。

「推し活」は、現代社会のストレスに対する重要な心理的はけ口として機能している。ファンが「推し」に没頭することで、現実の困難から一時的に解放され、心の活力を取り戻すことができる。しかし、その肯定的な効果は、健全な境界線と自己認識の維持にかかっている。

活動が過度になり、現実生活とのバランスが崩れると、既存の精神的脆弱性を悪化させ、燃え尽き症候群、金銭的負担、社会的孤立につながる可能性がある※1)。これは、健全な「推し活」の実践を促すための、より広範な意識向上とリソースの必要性を示唆している。