「推し活」による出費は多岐にわたるカテゴリーで発生しており、調査対象の全9カテゴリーで出費が確認されている※4)。
上位の出費カテゴリーは「公式グッズ」「チケット」「CD」といった直接的なものに加え、「遠征」(交通費・宿泊費)が大きな割合を占める※4)。過去1年間でこれらの出費が増加したと回答した人は全カテゴリーで8割以上、特に「遠征」と「公式グッズ」では9割以上に上る※4)。この成長は、「推し活」が単なる趣味を超え、文化的・経済的な現象として社会に定着しつつあることを裏付けている ※4)。
矢野経済研究所の2023年調査によると、ライブ・エンターテインメント(6,408億円)、アニメ(2,850億円)、アイドル(1,650億円)など、多岐にわたる分野で大きな市場規模が確認されている ※8)。
以下に、推し活市場規模の推移と主要カテゴリー別出費額を示す。
「推し活」市場は、広範な経済的圧力下でも比較的安定した成長を続ける可能性を秘めている。新型コロナウイルス感染症の影響による製造・物流コストの増加や物価上昇にもかかわらず、グッズ代への支出が増加しているという報告は※3)、ファンが自身の「推し活」を他の支出よりも優先する傾向があることを示唆している。
このことは、不況時においても堅調な消費を維持する可能性を示しており、企業は、この献身的な消費者層に特化した戦略を構築することで、安定した収益源を確保できるかもしれない。
市場はもはや若年層の可処分所得だけに依存しているわけではない。特に30代前半女性の「推し活」人口が顕著に増加していること※4)は、「推し活」がもはや「若者の文化ではない」という認識を裏付けている※4)。
より高い可処分所得を持つ可能性のある高年齢層が参加することで、市場の安定性と全体的な価値が増加する可能性がある。これはまた、「推し活」が学生生活から職業生活、家族生活へと、異なるライフステージに適応して進化していることを意味し、企業はそれに応じて戦略を調整する必要があることを示唆している。
2.4 「推し活」の社会的・心理的影響