また原子力と石炭火力のフェーズアウトは、不安定な太陽光と風力と高価な天然ガスの輸入への依存にドイツを押しやり、欧州一高い電気料金をもたらした。「この電気料金の高騰は社会的に正当化できないだけでなく、我々の経済・繁栄・社会の安寧を脅かしている」として、以下の改革をメルツ首相に要求している(要約):
電気料金は国際的に競争力ある水準にしなければならず、特に産業用電力料金は5¢/kWhが必要である。この産業用電気料金に求める水準は、政策的なCO2コストやその他の規制によって追加的に押し上げられることがあってはならない。
エネルギー多消費の生産拠点に対して、送配電料金、再エネ配電賦課金、電力インフラへの必要容量接続費用といった費用項目の、完全かつ恒久的な免除を求める。
産業がもっている自家発電への現状以上の負担増の回避を求める。
ドイツとEUが進める気候変動対策のこれ以上の早期導入を止める代わりに、世界すべての関連国が(われわれと)同等のコミットをすることの必要性に(政策を)明確にリンクさせることが必要。
輸出対策を含む効果的なCBAMの導入、迂回貿易の回避、実際の競争状況を踏まえた対象品目の拡大を通じて、産業をEU-ETSによる負担から守ること。
貿易政策のアップグレードと近代化が必要(特に対中国でのアンチダンピング、アンチ補助金の仕組み)
現実的な技術・目標に基づいた水素戦略の抜本的な改定が必要。「先行グリーン市場」が短期的に形成されないという現実を鑑みて、水素に代わる競争力ある代替品を利用可能としていく必要がある。
CCUSを可能とするための、技術や産業に分け隔てしない国によるリスク補償(カバー)と、インフラ投資を含む投資促進的な政策パッケージの火急的な採択が必要。
火力発電所の休止のモラトリアム(休止の前に新たな安定容量が確保される必要がある)
むやみな太陽光、風力の拡大停止(送配電能力に整合した投資のみを認可)
同書簡ではメルツ首相に以上のような具体的な要求をした上で、「ドイツ政府の誤ったエネルギー・気候変動政策を正し、われわれのエネルギー供給を再び国際的に競争力あるものにする(make our energy supply internationally competitive again)」ことを要求している(トランプ大統領のMAGAのもじりか?)。