2つ目と3つ目の実験では、前述の「助ける」対「妨害する」行動の比較を行いました。
さらに注目すべきなのは、研究チームが赤ちゃんの反応を正しく測るために、「社会的な動き」と「そうでない動き」を慎重に区別していた点です。
一見すると、どちらも似たような丸いキャラクターが画面上を動くだけのシンプルなアニメーションに見えるかもしれません。
しかし、実はそこには明確な違いがありました。
「社会的な動き」のバージョンでは、登場する2つのキャラクターがどちらも自発的に動いているように見えるように設計されていました。
たとえば、坂を登ろうとするキャラクターAが頑張っても登れずにいるところへ、別のキャラクターBがやってきて、後ろから押して助ける――そんなふうに、“助け合い”や“妨害”のやりとりがあるように感じられる演出が施されていたのです。
一方で「非社会的な動き」のバージョンでは、片方のキャラクターだけが動き、もう一方はまるで物体のようにじっとしていました。この場合、BがAに近づいて押す動きは、単に「物体を押している」ようにしか見えません。助ける・邪魔するといった関係性はそこには感じられないのです。
このようにして、研究者たちは「動きそのものに反応しているのか」「社会的な意味を見ているのか」を厳密に区別できるような条件を整えました。
実験は、すべて赤ちゃんの目の高さに設置されたスクリーンとカメラによって行われ、どちらの動画をどれくらいの時間見つめたかが精密に記録されました。
ではこれらの結果はどうなったのでしょうか?
赤ちゃんの“目”が映し出す、人間の本質とは?
実験の結果は、どのパターンでも一貫していました。
生後わずか5日という超早期の赤ちゃんたちは、「誰かを助ける行動」や「相手に近づこうとする行動」を見せるキャラクターのほうを、明らかに長く見つめていたのです。
逆に、「相手を押し下げる」「避けて遠ざかる」といった不親切な行動には、それほど注意を向けていませんでした。