赤ちゃんが“親切な行動”を好むのは、人間の生まれながらの特性を示しているのでしょうか? それとも、数カ月の間に周囲の大人のふるまいや経験を通じて驚くべき速度で学習しているためなのでしょうか?
この違いを見極めるには、「社会的経験がほとんどない状態」で赤ちゃんを観察する必要があります。
つまり、生まれて間もない時期――できるだけ“生まれたて”の赤ちゃんを対象にした研究が必要だったのです。
今回の研究では、まさにその課題に挑戦しました。
研究チームは、イタリア・カターニアにある病院(ARNASガリバルディ病院)で生後わずか5日目の赤ちゃんたちを対象に実験を行いました。
彼らが調べたのは、「赤ちゃんは、他者に対して親切な行動をとるキャラクターと、邪魔をするキャラクターのどちらにより注目するのか?」という点です。
この問いを確かめるために、研究者たちはアニメーション動画を使いました。

画面には、丸いキャラクターが坂を登ろうとしている様子が映ります。
ある動画では、別のキャラクターがその登ろうとする動きを助けるように後ろから押してくれます。これは「助ける行動(helping)」です。
別の動画では、登ろうとするキャラクターを上から押し下げてしまいます。これは「妨害する行動(hindering)」です。
赤ちゃんたちは、これら2つの動画を同時に見せられたとき、どちらをより長く見つめるかで比較されました。
この手法は「注視時間(looking time)」と呼ばれ、言葉を話せない乳児が何に関心を持っているかを調べる心理学の基本的な方法です。
研究では合計で3つの実験が行われました。
1つ目の実験では、「近づいていく行動」と「避けて離れていく行動」のどちらに赤ちゃんが注目するかを調べました。