次に、同じ個体について実施した「新奇物体テスト(見慣れない物体テスト)」と「新奇環境テスト(見慣れない環境テスト)」でも、個体ごとに明確な違いが見られました。
あるカメは、新しい物体にすぐに近づき、首を大きく伸ばして積極的に探索しようとしました。一方で、別のカメは長時間その場にとどまり、周囲の変化に対して慎重に反応していました。

研究チームはこれら3つのテスト結果を統計的に分析し、認知バイアス課題で“楽観的”な判断をしたカメほど、新奇テストでもより早く動き出し、首を大きく伸ばすなど積極的な行動をとる傾向があることを確認しました。
つまり、「気分が前向きなカメ」は「新しい環境にも自信をもって反応する」という対応関係が観察されたのです。
この結果は、アカアシガメにも我々と同じような「気分」があり、それが判断のしかた(楽観的・悲観的)だけでなく、不安の強さや行動にも影響を及ぼしていることを示唆しています。
これまで爬虫類は、「感情や気分が乏しい動物」と見なされがちでした。しかし今回の研究は、その思い込みを覆す重要な証拠になったといえるでしょう。
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参考文献
New study shows tortoises experience feelings similar to our own
https://phys.org/news/2025-07-tortoises-similar.html
元論文
Evidence of mood states in reptiles
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-025-01973-y
ライター
相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。
編集者
ナゾロジー 編集部