動物園でじっと動かずにいるカメや、家で飼っているトカゲを見て、「この子、今なに考えてるんだろう?」と不思議に思ったことはないでしょうか。
私たちは、犬や猫のように表情や動きがわかりやすい動物の“感情”はなんとなく感じ取ることができます。一方で、カメやトカゲなどの爬虫類は、「なにを考えているのか分からない」「そもそも感情なんてあるの?」と感じる人も少なくないでしょう。
実際科学の世界でも、これまで爬虫類の“気分”や“感情”についての研究は、ほとんど手つかずのままでした。
しかし今、「カメの気分を行動から読み取った」という注目すべき研究成果が発表されました。
この研究を行ったのは、イギリス・リンカーン大学(University of Lincoln)のチームです。彼らは赤足リクガメを使った行動実験によって、カメが“楽観的”か“悲観的”かといった気分の違いを示すことに初めて成功しました。
この研究の詳細は、2025年6月付けで科学雑誌『Animal Cognition』に掲載されています。
目次
- 爬虫類の心を探る、ちょっと変わった行動実験
- 「楽観的なカメ」は新しいものにも前向きだった――行動に表れた“気分”と“不安”のつながり
爬虫類の心を探る、ちょっと変わった行動実験
カメのような爬虫類にも“気分”があるとしたら——それは私たちがこれまで抱いてきた動物観を大きく揺さぶる発見です。
これまでの動物研究では、犬や猫、ウサギや鳥など、いわゆる「感情豊か」に見える動物が多く研究されてきました。これらの動物ではすでに、気分の良し悪しによって判断や行動に違いが出ることが確認されており、そのときの内面的な状態を行動から間接的に読み取る手法が確立されています。
そのひとつが「認知バイアス課題(cognitive judgement bias task)」という実験手法です。
この方法では、まず動物に「エサが必ずもらえる場所」と「絶対にもらえない場所」を学習させます。