6/20発売の『Wedge』7月号の特集は、戦後80年を踏まえた「沖縄問題」。ぼくの博士論文を読んでくれた編集部からの依頼で、総論にあたる部分を寄稿した。そこでも、同じ話から始めている。

軍事基地と医療には似た性格がある。どちらも平和な暮らしに不可欠だが、あまりに必要性を強調しすぎると、逆に命を傷つけてしまう。

潔癖症のように手洗いに没頭したら、皮膚が破けて血が出てくるし、カロリーの表示ばかりを始終気にすると、メンタルを壊して摂食障害になる。「健康」には、意識せずにいると失われるが、しすぎてもかえって自らを損なう、厄介なジレンマがある。

実は「国家主権」も、同じ特徴を持っている。領土紛争は「主権潔癖症」みたいなもので、わずかでも自国の主権が損なわれるリスクはイヤだと、各国が過敏になることで生じる。相手国へのアレルギーを互いに亢進させれば、時に戦争になる。

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けっして他の原稿を手抜きで書いてるわけじゃないけど、2009年のデビュー作から最新刊の『江藤淳と加藤典洋』まで、自分のキャリアを集大成して論説にまとめる機会は、そうない。旧ソ連だけでなく、中東でも「同じ問題」が火を噴いたいま、ひとりでも多くの人に手に取ってほしい。

そして、実はこの記事は『Wedge』誌で、新たに始める連載の初回にもなっている。どんなコンセプトかも、見て確かめてくれたら嬉しい。