イギリスや中国以外にも、複数の代表チームを持つ国家が存在する。
例えば、フェロー諸島はデンマークの自治領でありながらも、1988年にFIFAに、1990年にUEFAに加盟。独自のサッカー協会を持ち、W杯や欧州選手権予選、UEFAネーションズリーグに参加している。フェロー諸島は政治的には自治権を、サッカーにおいては独自のリーグ「フェロー諸島プレミアリーグ」を運営しており、その文化的アイデンティティが独立した代表チームの存在を支えている。
また、ニューカレドニアやタヒチ(仏領ポリネシア)はフランスの海外準自治地域だが、OFC(オセアニアサッカー連盟)に加盟し、独自の代表チームを結成している。特にタヒチ代表は、2012年のOFCネーションズカップで優勝し、2013FIFAコンフェデレーションズカップブラジル大会に出場した。これらのケースも、FIFAが自治権を持つ地域を独立したメンバーとして認める方針に基づいている。

サッカー界への影響は
複数チームの存在は、サッカー界に独自のダイナミズムをもたらす。イングランドとウェールズのW杯での対戦は、両地域のサポーターを熱くさせ、香港やマカオの代表チームは、アジアサッカー界での競争を多様化させ、両地域の若手選手に国際舞台での機会を提供している。
しかし課題もある。イギリスの場合、仮に単一の「イギリス代表」があれば、イングランド代表FWハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)や、ウェールズ代表FWブレナン・ジョンソン(トッテナム・ホットスパー)、スコットランド代表MFカラム・マクレガー(セルティック)、北アイルランド代表DFジョニー・エヴァンズ(マンチェスター・ユナイテッド)といった有力選手が共存し、W杯優勝も狙えそうな強いチームが作れる可能性を感じさせる。ところが地域間の対抗意識や歴史的背景から実現は困難だ。また、香港やマカオの代表チームは規模が小さく、国際大会での競争力向上が課題となっている。