香港代表 写真:Getty Images

7月7日から15日にかけて韓国で開催中の、東アジアサッカー連盟(EAFF)主催のE-1選手権(東アジア選手権)。Jリーグ勢で構成された日本代表は、8日の初戦(龍仁ミル・スタジアム)で、ホンコン・チャイナ(香港代表)を6-1で一蹴した。ここで引っ掛かる点は、試合内容でも選手のパフォーマンスでもない。対戦相手「ホンコン・チャイナ」の呼称である。

サッカー界では通常、1国1代表チームが原則だ。しかし特定の国では歴史的・政治的理由から複数のチームが認められている。なぜそのような例外が許されているのかは、FIFA(国際サッカー連盟)の規定や歴史的背景が基になっている。また、各地域のサッカー協会の設立時期や文化的アイデンティティの影響も存在する。

ここでは、1つの国家内に複数のサッカー代表チームが存在する特殊な事例として、イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)、中国(中国本土、香港、マカオ)の例を挙げ、その背景と理由を考察する。


イングランド代表 写真:Getty Images

イギリスの4つの代表チーム

我々日本人は「イギリス」と一括りにして呼ぶが、その正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」だ。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの地域から構成される連合国家であることを意味する。

それぞれが独自のサッカー協会を持ち、FIFAワールドカップ(W杯)やUEFA欧州選手権(EURO)などの国際大会では個別の代表チームとして参加する。2022年カタールW杯では、イングランドとウェールズがグループステージで同組に入り、「バトル・オブ・ブリテン」として注目を集めた。

イギリスにおける複数チームの参加が可能な理由はサッカー誕生の歴史にまで遡る。イングランドサッカー協会(FA)は1863年に創立され、世界初のサッカー協会として近代サッカーのルールを確立したが、その後、スコットランド(1873年)、ウェールズ(1876年)、北アイルランド(1880年)がそれぞれ独自のサッカー協会を創立。