つまりFIFAの創立時(1904年)にはすでに4協会は存在しており、FIFAはこれらを個別の加盟協会として受け入れた。これは現在に至るまで維持されている歴史的慣例である。FIFAの原則よりも、サッカー発祥の地へのリスペクトと歴史的影響力が優先され、例外として個別加盟が認められたのである。

また、各地域の強い独立意識も影響している。1872年のイングランド対スコットランドの試合は「世界初の国際試合」とされ、一つの主権国家内の地域どうしの対戦でありながら、独立した代表チームとして国際試合として認定された。

このような歴史的背景から、イングランドの「スリーライオンズ」やウェールズの「レッドドラゴンズ」など、各チームは独自の愛称とエンブレムや地域の文化的アイデンティティを持ち、それぞれの地域住民は“我が代表チーム”を誇りにしている。

スコットランドやウェールズは文化的アイデンティティが特に強い。五輪ではIOC(国際オリンピック委員会)が「1国1チーム」を厳格に適用するために「イギリス代表(United Kingdom national football team)」が結成されるが、イングランド以外の地域では未だに抵抗があるという。

なお、イギリスの海外領土、イギリス領ヴァージン諸島、ケイマン諸島、バミューダ諸島、モントセラト、アンギラ、タークス・カイコス諸島は、それぞれ独自のサッカー協会を持ち、FIFAやCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)に加盟している。


中国代表 写真:Getty Images

中国とその地域の代表チーム

中国の場合、中国本土(中華人民共和国)、香港、マカオがそれぞれ独立した代表チームを持っている。香港サッカー協会は1914年、マカオサッカー協会は1939年に設立されており、1924年設立の中国サッカー協会とは別個に活動してきた。この構図は、近年中国政府による統治への関与が強まっている中でも維持されている。