この背景には、香港とマカオの特殊な歴史と政治的地位がある。香港はかつてイギリスの植民地、マカオはポルトガルの植民地であり、それぞれ独自の統治システムとサッカー協会を持っていた。中国への返還後も「一国二制度」の枠組みにより、高い自治権が認められ、スポーツ分野においても独立した協会体制を保持している。

FIFAは、歴史的に独立したサッカー協会を持ち、運営体制が確立された地域については、国家でなくても個別の加盟を認めることがある。香港とマカオはこの基準に合致しており、現在もそれぞれが独自の代表チームとしてW杯予選やアジアカップ予選に出場している。

香港代表は、2023AFCアジアカップカタール大会で予選を突破し本戦に出場、3戦全敗に終わったが、香港のサッカー熱を高めた。独自のリーグ戦である「香港プレミアリーグ」は2014年創立で、現在は9クラブ体制。2部(15クラブ)との入れ替えもあるリーグだが、その前身の「香港ファーストディビジョンリーグ」の創立年は1908年。中国本土の「中国スーパーリーグ」(2004年創立)の前身である「中国選手権」の創立は1951年。香港よりも半世紀近く歴史が浅い。

一方、マカオ代表は規模が小さく、アジアカップやW杯予選での実績は乏しいが、FIFA加盟協会としてランキングに名を連ねている。この2チームは、中国本土の代表チームとは異なる戦術を持ち、マカオ代表は過去には日本人監督を招聘するなど(上田栄治監督:2000-2002/今井雅隆監督:2003-2004/影山雅永監督:2006-2008)、独自の強化策を図っている。1973年創設の独自のサッカーリーグ「リーガ・デ・エリート」も存在し、現在は10クラブで構成されている。

なお、香港・マカオが主権は中国にある前提でFIFA加盟が継続されているのに対し、台湾代表は事実上の独立国の代表として国際大会に参加している特殊ケースだ。国際政治の妥協の産物である「チャイニーズ・タイペイ」名義で活動している。

FIFA 写真:Getty Images

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