ただし、これらの関連性については統計的に十分な確証が得られているわけではなく、今後さらに詳しい調査が必要です。
今回の研究は、過去の人類が残した遺伝子という「眠れる古代の設計図」が、実は私たちの中で密かに影響を与え続けている可能性を明らかにしました。
そして、このような遺伝子変異を現代の技術で甦らせることで、化石や骨格の研究だけでは決してわからない古代人類の遺伝子の働きを直接観察できた点でも画期的でした。
遺伝子のわずかな違いが、どのようにヒトの進化や病気に影響を与えているのかを理解することは、進化医学やゲノム医学の新しい未来につながるでしょう。
古代のDNAを現代に再現し、実際に機能させるという今回のアプローチは、「人類とは何か」という進化の大きな問いに答えるための新しい道を開くことになりそうです。
今後の研究の最大の課題は、こうした小さな遺伝子の変化が、私たち人間の体に実際にどれほど影響を与えているのかを、さらに明確に解き明かすことです。
私たちの中に眠っている古代人の遺伝子は、私たちの健康や病気のリスク、さらには私たち自身の進化にどのような意味を持つのでしょうか?
こうした疑問への答えが、次の研究で明らかになることを期待しましょう。
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元論文
A Neanderthal/Denisovan GLI3 variant contributes to anatomical variations in mice
https://doi.org/10.3389/fcell.2023.1247361
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。