オーストラリアの「堅固な家族と強いコミュニティづくり」には移民政策の影響が強いが、その結果として表3のように着実な人口増加がうかがえる(「世界経済のネタ帳」 2025年4月24日)。また2022年の合計特殊出生率も1.63であり、その年の日本は1.26であった。
なお消費税率は日本と同じ10%なので、2020年で合計特殊出生率を揃えると、日本が1.33であったのに対して、オーストラリアでは1.58であった。

表3 オーストラリアの人口増加 (出典)「世界経済のネタ帳」(2025年4月24日)
移民政策を越えて「堅固な家族」と「強いコミュニティづくり」が肝要
移民の行動様式は受入国の文化とは異なり、価値パターンも違うために、受入国としては一定程度の「社会的凝集性」を維持するために強力な政策展開が必要となる注3)。2002年当時のオーストラリア連邦政府、州政府、コミュニティでは、それが「堅固な家族」と「強いコミュニティづくり」なのであった。
すでに日本だけではなく、アメリカを除くG7ですら、出生数の低下と総人口減少が鮮明になってきた現在、20年前のオーストラリアの「堅固な家族」と「強いコミュニティづくり」は、少子化対策にとってもいろいろなヒントを内蔵しているように思われる。
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注1)当時、オーストラリア大使館のホームページで公開されていたCommonwealth Department of Family and Community Service(Facs)2002 の要約を使った。
注2)「堅固な家族」は単身=未婚化が連鎖する現代日本では、もう一度真剣に取り上げてみたい概念でもある。なぜなら、世界的な「出生数の低下」の主因として、エバースタットが指摘した「結婚からの逃走」(flight from marriage)と「家族からの逃走」(flight from family)とは真逆の方針になるからである。