参政党の創設者であり、事務局長の神谷宗幣氏は、元々は吹田市議会議員であった。彼は、既存政党の枠組みに飽き足らず、2010年に「龍馬プロジェクト全国会」を立ち上げる。これは、全国の若手の地方議員や経営者、社会活動家などを超党派で集め、「日本の将来を自分たちの手で切り拓く」という志を共有するための、一種の「政治的プラットフォーム」あるいは「私塾」であった。

この龍馬プロジェクトの10年以上にわたる活動は、後の参政党にとって、以下の三つの重要な基盤を提供した。

全国的な人的ネットワーク:北海道から沖縄まで、志を同じくする地方議員や活動家のネットワークが、参政党の地方組織の立ち上げや、選挙活動の際の中核となった。 「DIY(Do It Yourself)」精神の醸成:「誰かにやってもらうのではなく、自分たちでやる」というDIYの精神は、龍馬プロジェクトの根幹であり、そのまま参政党の「参加型民主主義」という理念に引き継がれた。 思想の共有と深化:定期的な勉強会を通じて、「日本の歴史や伝統(大和心)を尊重する」「中央集権的な官僚支配からの脱却」「地域からの国づくり」といった、後の参政党の思想的骨格が、時間をかけて醸成されていった。

源流その2:各分野の「専門家」ボードメンバーの合流

神谷氏が築いたこの「政治インフラ」に、それぞれの分野で、既存システムへの強い問題意識を持つ「専門家」たちが合流することで、参政党の思想は、より多角的で、具体的な政策の肉付けを得ることになる。

松田学氏(元財務官僚):財務省の緊縮財政路線を内部から見てきた経験に基づき、「財政破綻論は嘘だ」と断じる。彼の参加は、参政党の「積極財政」という経済政策に、理論的な権威を与えた。 吉野敏明氏(歯科医師):現代医療や食の安全性に強い警鐘を鳴らし、「医・食・農」は一体であるべきだと主張。彼の参加は、参政党の最も特徴的な政策である「食と健康」のテーマを確立させた。

赤尾由美氏(実業家):「日本の国柄」や「皇統の維持」を訴え、伝統的な保守の価値観を代弁。彼女の存在は、党のアイデンティティを、日本の歴史と伝統に深く根差したものにした。

このように、参政党とは、神谷宗幣氏が長年かけて作り上げた「DIY精神を持つ、全国的な草の根ネットワーク」というプラットフォーム(土台)の上に、各分野の専門家が持つ「反エスタブリッシュメント的な思想と政策」というコンテンツ(種)が蒔かれることによって誕生した、極めてハイブリッドな組織なのである。