れいわ新選組の党名が持つこの「矛盾」は、無意識のうちに、本来であれば取り込めたはずの、右派的なポピュリズムに親和性を持つ層をフィルタリングし、結果として、その一部を参政党へと向かわせる、一つの大きな要因となっているのだ。
第5章:支持層の解剖と未来への「時限爆弾」──誰が参政党を支え、何が彼らを壊すのか
参政党の躍進を分析する上で、多くの専門家が首を傾げるのが、その支持層の構造である。従来の選挙分析で用いられる「無党派層」という言葉では、彼らの実像を捉えることはできない。なぜなら、参政党が取り込んでいるのは、政策を比較検討して投票先を決める浮動票ではなく、それとはまったく異なる、二つの特殊な層だからだ。
本章では、この特異な支持層を解剖し、その強さの源泉を探る。そして同時に、まさにその成功が、党の未来に「時限爆弾」を仕掛けているという、深刻な内部矛盾について論じたい。
第一節:誰が参政党を支えるのか──「目覚めた無関心層」と「失望した保守層」の融合参政党の支持基盤は、大きく分けて、水と油ほど異なる二つの層のハイブリッドで構成されている。
1.「目覚めた」無関心層 これは、これまで政治に全く関心がなかった、あるいは政治を汚いものとして敬遠してきた層である。特に、都市部の子育て世代の女性や、健康・自然派志向の若者に多い。彼らを「目覚め」させたのは、第2章で分析した「身体の政治学」だ。
なぜ目覚めたのか:「憲法改正」や「財政政策」といった抽象的なテーマには、彼らの心は動かなかった。しかし、「子供たちが食べる給食の安全性」「毎日使うシャンプーの成分」「強制されるかもしれないワクチンの是非」といった、自らの身体と家族の安全に直結するテーマが、初めて彼らにとっての「政治」となった。 彼らの動機:イデオロギーではなく、「生活防衛」であり「生命の探求」である。彼らにとって参政党は、政党というより、真実の健康情報や、安全な生き方を教えてくれる「学びのコミュニティ」に近い。
2.「失望した」保守層 これは、本来であれば自民党を支持してきた、あるいはそれ以上に右派的な思想を持つ保守層である。彼らは、長年、自民党の「リベラル化」に不満を募らせてきた。
なぜ失望したのか:「グローバルな価値観に屈し、日本の伝統や誇りを軽んじている」「中国に対して弱腰すぎる」「財務省の言いなりで、大胆な国家経営ができていない」。彼らの目には、自民党はもはや真の保守政党ではなく、既得権益を守るだけの「現状維持勢力」に映っている。 彼らの動機:「真の日本を取り戻したい」という、強いイデオロギーである。参政党の掲げる「国守り」「歴史教育の見直し」「対中強硬姿勢」は、彼らが自民党に感じていた不満への、直接的な答えとなっている。