参政党の巧みさは、本来であれば交わることのない、この二つの層を「反グローバリズム、反エスタブリッシュメント」という共通の敵を設定することで、一つの大きなエネルギーの塊へと「融合」させた点にある。

第二節:未来への時限爆弾──「エリート新人議員」と「カリスマ代表」の軋轢

この特異な支持構造は、参政党に爆発的な力を与えたが、同時に、極めて深刻な矛盾を内包している。その矛盾は、まさに今回の参議院議員選挙(2025年7月)を経て、当選するであろう新人議員たちによって、一気に表面化する可能性が高い。

今回の比例区名簿を見ると、医師、元官僚、経営者、弁護士といった、いわゆる「学歴や社会活動歴がしっかりしたエリート層」が名を連ねている。彼らが国会議員という「公人」となり、永田町の論理の中で活動を始めた時、党の創設者であり、精神的支柱である神谷宗幣代表との間に、深刻な「軋轢」が生じることは、ほぼ避けられないだろう。

その軋轢には、いくつかの火種が予測される。

火種1:政策の「純粋性」と「現実性」の対立 党の基本方針である「反緊縮財政」や「食の安全基準の見直し」は、支持者にとっては絶対の教義だ。しかし、元官僚や経済の専門家である新人議員は、国会の委員会などで、その政策の現実性や、他国との協調について、厳しい追及を受けることになる。その時、彼らが「より現実的な路線」を模索し始めれば、それは神谷代表や、純粋性を求める党員から「裏切り」「変節」と見なされかねない。 火種2:メディア戦略の対立 神谷代表と党の基本戦略は、既存メディアを「敵」とみなし、YouTubeなどの独自メディアで支持者と直接繋がる「アンダーグラウンド型」だ。しかし、国会議員は、法案を動かし、世論を喚起するために、既存メディアとの関係構築が不可欠となる。新人議員がテレビの討論番組に出演したり、大手新聞の取材に応じたりするようになれば、それを「敵への懐柔」と捉える強硬な支持層との間に、深刻な溝が生まれる。 火種3:党の「主導権」をめぐる対立 これまで、参政党は神谷代表のカリスマと、彼を中心とするボードメンバーによって、トップダウンで運営されてきた。しかし、国会議員団が形成されれば、彼らは「国民の代表」という、神谷氏とは別の正統性を手に入れる。そして、政党交付金という公的な資金も、彼らを中心に配分されることになる。「党務を執行する事務局(神谷代表)」と「立法活動を行う議員団」との間に、党の路線や資金をめぐる主導権争いが起きるのは、多くの新興政党が経験してきた道である。

この軋轢は、参政党の「成功」が生み出す、必然的なジレンマだ。 党が成長し、より多様で有能な人材を惹きつければ惹きつけるほど、神谷代表一人のカリスマで党をまとめ上げることは困難になる。