参政党が、一過性のブームで終わらず、持続可能な政治勢力となるか否か。それは、この「カリスマ創業者と、エリート新人議員団との関係」という、党内に埋め込まれた時限爆弾を、いかにして平和的に解除できるかにかかっている。そのプロセスは、党の真の成熟度を測る、最初の、そして最大の試練となるだろう。
終章:もし参政党が政権を取ったら──日本の未来、世界の分断
これまでの章で、私たちは参政党という現象の「なぜ」と「いかにして」を、世界の潮流と日本の土壌、そしてその巧みな戦略と思想の両面から解き明かしてきた。しかし、この分析を完成させるためには、最後に、一つの思考実験を行わなければならない。
それは、「もし、参政党が政権を担う日が来たら、日本はどう変わるのか」という、未来への問いである。
もちろん、これは現時点においては、可能性の低いシナリオかもしれない。しかし、彼らが掲げる理念と政策をその論理的帰結まで突き詰めてみることこそ、この新しい国民運動が内包する希望と、そして危うさの本質を、最も鮮明に映し出す作業となるだろう。
第一節:「最初の100日間」──日本を襲う衝撃「神谷内閣」が発足したその日から、日本の政治風景は一変する。まず、財務省、外務省、厚生労働省、文部科学省といった主要官庁には、党の理念に忠実な人物か、あるいは既存の官僚機構を「破壊」することに躊躇のない民間人が、大臣や副大臣、政務官として送り込まれるだろう。
そして、矢継ぎ早に「最初の仕事」が断行される。総理による所信表明演説では、「戦後レジームからの脱却」と「真の日本の主権回復」が、高らかに宣言される。具体的な行動として、WHO(世界保健機関)のパンデミック条約からの脱退交渉開始を指示。中国共産党に対しては「人権侵害に対する、最も強い言葉での非難」声明を発表。文部科学省には、新たな歴史教科書検定基準の策定を命じる。
この「電撃作戦」は、国内の既存メディアや官僚、学術界から猛烈な批判を浴びるだろう。しかし、内閣と党は、SNSと独自の動画チャンネルを通じて「我々は、国民との約束を果たしているだけだ。抵抗しているのは、国を売り渡してきた古い支配層だ」と支持者に直接語りかけ、むしろその対立を、自らの正当性を強化する燃料へと変えていく。永田町と霞が関は、かつてない混乱と熱狂に包まれる。
第二節:日本の作り変え──「国守り」の名の下の内政