四倉海水浴場・防潮堤 2017年9月

この防潮堤の植栽が、まるで海に面した自然の林のように成長していた。

木々が苗に過ぎなかったとき、津波被害を受けて復活は難しいとまで言われた四倉で、防潮堤が海を隠してしまい慣れ親しんだ景観を変え過ぎたとこぼす人がいた。8年が経過して、たしかに防潮堤で海は見えないが、こんな丘と林があっても良いかもしれないと思える景観になった。

だが防潮堤の登り口近くに、遊歩道の途中に、ネムノキが赤い花を咲かせていた。この防災緑地と呼ばれる植栽に植えられたのはクロマツ、クヌギ、コナラ、エゴノキ、ヤマハンノキ、ヤマザクラ、ヤマボウシだったので、ここでもネムノキはどこからかやって来たようだ。

防潮堤のネムノキ

もしかすると四倉地区でネムノキを気にしているのは私だけかもしれないが、ここが被災地であるのをどうしても強く意識せざるを得なかった。

ネムノキが目立つ遊歩道を抜けて防潮堤のてっぺんに出た。眼下にヤシ、その向こうには砂浜と、楽しげな人たちと、海があった。砂浜では、監視台がもうすぐ完成しそうだった。

四倉海水浴場

四倉海水浴場

震災と原子力災害、傷跡、再整備事業の様子と人々、地域ごとの運と不運。これらは、四倉海水浴場に来ても整理できず、混乱を解決できないままだった。しかし、「あまり深刻に考えないほうがいい」と四倉の海に諭された気がした。それぞれの地域、それぞれの立場に対して、よそ者の私が理解できると思うほうがおこがましいのではないかと。

賑わっている道の駅よつくらへ行った。

林さんたちとの宴席に出た大粒のブルベリーが陳列されていたので買った。おのざきの厚揚げソフトかまぼこも買った。立派なエゴマの葉も買った。クーラーバッグにはほっと大熊を出発した時から氷の塊と、大熊町のおおくまパン、おおくまあんぱん、肉球クリームパンが入っている。小野のしずく、大熊町で採取された百花蜜と、いただきものの二種類のはちみつもある。常磐ものの魚は腹に収めた。