結果として明らかになったのは、女性たちは加齢とともに「怒りを感じにくくなり」「怒りをぶつける傾向が減り」「怒りを上手に扱う力が高まっていく」という一連の変化でした。
今回の研究では、「怒りを感じる頻度や強さ」だけでなく、それをどう表現するかも詳しく分析されました。
それによると、中年期の女性は、怒りを爆発させるような表現(Anger-Out)は次第に減り、冷静にコントロールする力(Anger Control)は年齢とともに向上していました。
つまり、「すぐに声を荒げる」「相手にぶつける」といった直接的な怒り方は少なくなり、より穏やかに対応できるようになっていたのです。
とはいえ、この変化だけを聞くと、怒りを感じても外に出さず、心の中に押し込める傾向(Anger-In)が強まっただけではないか? という疑問が浮かびます。
しかし、データ上では年齢に応じて、心の中に押し込める傾向(Anger-In)が増加するという事実は見られませんでした。
これは、「年齢を重ねたからといって、怒りをただ我慢するようになった」ということではなく、うまくコントロールして対処する力が育ったことを示しています。
そのため、若い頃のように、怒りを表出しづらいために、「仲間内で悪口を言って発散する」「SNSなどで間接的に吐き出す」などの行動も減少する傾向があると考えられます。
女性は更年期で感情が不安定になりがちということはよく言われるため、この時期に怒りのコントロールが上手くなっているという報告は矛盾するように感じる人もいるかもしれません。
確かに、怒りの強さそのもの(ステート・アンガーやトレイト・アンガー)は、更年期の移行期にやや高まる傾向がありました。
しかし、これはホルモン変化や心身の不安定さに伴う一時的なものと考えられています。それを過ぎて閉経を迎えると、怒りの強さは徐々に下がっていき、より穏やかな感情の安定期へと移行していくことが研究からは示されました。