また、40代〜50代にかけて、月経の不安定さや更年期症状など、ホルモンバランスの大きな変化に直面し、これが感情や怒りの変化にも影響するため、年齢により怒りなどの感情のコントロールがどのように変化するかを明らかにするのは複雑な問題となっています。
そこでアメリカ・ワシントン大学(University of Washington)の研究チームは、こうした問題意識に基づいて女性の怒りのコントロールは年齢でどの様にコントロールされていくのかを明らかにしようと調査を行ったのです。
研究では、35歳から55歳の女性271人を対象に、更年期のステージごとに怒りの感情がどのように変化するのかを、心理学的な尺度を用いて精密に測定しました。
参加者たちは、ホルモン状態や月経の状況から5つの段階――「プレ更年期(閉経前)」「更年期移行期の前半」「更年期移行期の後半」「閉経直後」「閉経後」――に分類され、それぞれの時期における怒りの強さや表現方法、コントロールの程度などが評価されました。
怒りの評価には、以下の5つの心理尺度が用いられました:
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ステート・アンガー(State Anger):その瞬間に感じている怒りの強さ
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トレイト・アンガー(Trait Anger):普段から怒りを感じやすい傾向
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怒りの表出(Anger-Out):怒りを他人に向けて爆発させる傾向
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怒りの抑圧(Anger-In):怒りを我慢して内側に押し込める傾向
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怒りの制御(Anger Control):怒りを冷静に扱い、適切に反応できる力
さらにこの研究では、参加者の年齢や更年期の段階だけでなく、睡眠の質、喪失体験(身近な人の死など)、社会的支援の有無といった心理社会的な要因も統計的に調整することで、「単に年齢を重ねたから怒りが減る」という単純な解釈に留まらない分析が行われています。
このように、怒りという複雑な感情に対して、多角的かつ科学的にアプローチした点が、今回の研究の大きな特徴です。
「怒りを感じても、ぶつけなくなった」
